プロジェクト概要
文部科学省は、2019年12月に「GIGAスクール構想」を発表しました。
その目的は、「1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する」ものです。それ以降、全国の自治体でGIGAスクール構想が加速化しました。
A市教育委員会様でも2020年度より本格的に導入されましたが、そのGIGAスクール構想の実現と定着を図るために、ICT化の技術的な面での支援を行うためのICT技術者(GIGAスクールサポーター)を配置しました。
システム概要
A市様の小中学校および分教室の計64校に対して、サポーター4名体制で主に次のサポートを実施しました
システム環境
- ① ハードウェア:Chromebook
- ② OS : Chrome OS
- ③ 利用環境:Google Workspace for Education(旧名称:G Suite for Education)
サポート概要
- ① Chromebook端末の納入時および納入後の初期サポート
- ② 各校のインターネット通信環境の確認
- ③ 全学校への定期訪問(3カ月毎)
- ④ ヘルプデスクの設置
- ⑤ GIGAスクール専用ポータルサイトの作成と運用
- ⑥ 教員向けの共通使用マニュアルやルールの作成
- ⑦ 児童・生徒向けの共通使用マニュアルやルールの作成
- ⑧ 各学校での機器・ソフトウェアの使用方法・使用マニュアルの周知
- ⑨ 機器等の効果的な活用方法に関するアドバイス(事例紹介など)
- ⑩ ICTに関する研修の実施と講師派遣
- ⑪ オンライン学習時のシステムサポート
- ⑫ 学校情報セキュリティポリシー改訂支援
NXTechの提案・役割・強み
A市様は当社事業所と約700㎞の距離があります。そのため現地常駐ではなく、ICT活用による拠点間の距離を埋める工夫を教育委員会様に提案し実行しました。また、学校や教員によってICTの知識や保有スキルに差が見受けられるため、平準化に向けた対応を検討し実行しました。
質問の受付と質疑応答の一元管理
現地での常駐と学校訪問によるサポートではなく、各学校や教育委員会様からの質問は、「受付~検証~回答~解決」までの過程の抜け漏れを防止するために、電話やサポーター共有メールで受け付けた後、QA一覧表にて一元管理を図りました。
Web会議などのツールを積極的に活用
「ICT」は「Information and Communication Technology」の略称ですが、ITの間にあるコミュニケーション(通信、伝達、意思疎通)が最重要となります。
通信による「拠点間の距離」を縮めるだけでなく、GIGAスクール構想の実現と定着には、「人と人の距離」を縮めて信頼感を高めることが大切ですので、対面方式が最も効果的であると考え、「一対一」「一対多」「多対多」のケースを想定しながら、Web会議などの電子ツールを有効に活用することで、各学校への定期訪問や研修会、教育委員会様との定例会を実施するなどの工夫を行いました。
「Google Workspacefor Education」の各種ツールの活用
A市教育委員会様は、Chromebookの配布を決定したことから、利用環境は教育機関向けのクラウド型ツール群の「Google Workspacefor Education」となります。そこには多くのツール(アプリケーション)がありますが、全ての機能を使いこなすことは困難であり、授業での上手な活用方法も模索状態でした。
そこで、各ツールの良く使う基本機能の使用手引きを「教師向け」「児童・生徒向け」に分けて作成するとともに、一般公開されているYouTube動画や全国の学校での活用事例などを情報収集し、活用しやすいように整理した上で提供しました。
ポータルサイトの開設とGIGAスクールサポーター情報誌発行
誰もが閲覧できる情報の提供と共有すすめるために、GIGAスクール専用のポータルサイトを開設しました。また、サポーターからのプッシュ情報も必要であることから、お知らせや豆知識などを掲載したGIGAスクールサポーター情報誌をメルマガとして毎月発行し、全教師向けに発信しました。
GIGAスクール専用のポータルサイトの概要
- ① サポート情報
- ② よくあるお問い合わせ(QA集)
- ③ 「Google Workspacefor Education」の各ツールの使い方動画や各種手引書
- ④ Chromebookを初めて使用される方に向けた動画集
- ⑤ お役立ち情報(GIGAスクールを効果的に運用するための有益な情報)
- ⑥ 活用事例集(他自治体のGIGAスクール事例、学年・教科別の各ツールの授業活用事例など)
教師向け研修会の開催
学校や学校単位に限らない有志の教師からの要望で、Googleアプリ(classroom、フォームなど)や授業で活用できそうなアプリ(作画系)などをWeb会議を活用し、集合研修を実施しました。
実績/現状
ICT関係に関わる企業として、教育委員会様の当初の仕様書にないICTの積極的な活用を提案させていただき実行しました。そのことで各学校や教師の皆様との信頼関係を構築でき、さらにサポート業務の遂行がスムースになりました。
また、GIGAスクール専用のポータルサイトも好評で、市長が出席される市教育委員会主催の学校事例発表イベント内で紹介されました。
さらには、GIGAスクールサポーターとしてのスキルアップを図るために、Google認定資格である「Google教育者認定資格レベル2」「同レベル1」を取得しました。
プロジェクトメンバーの声
サポーターA.Uさん
GIGAスクールとは別に学校ごとの独自環境もありましたが、それらの独自環境は把握していないため、GIGAスクールと同じレベルで質問を受けた場合の一次切り分けに苦労しました。しかし、先生からの説明に対して丁寧に時間をかけて受付けるように心掛けたことで評価をいただきました。
なお、リモートならではの苦労はありましたが、ポータルサイトの開設やメルマガ(GIGAスクールサポーター情報誌)の発行、研修会の開催はサポーターから企画~実施が出来た事と、先生方の反応が良かったことが嬉しかったし、運営していて楽しかったです。
サポーターK.Hさん
サポーターとして苦労したことは、最初は質問される学校の状況が見えづらかったことでしたが、定期的にヒアリングを行うことで(64校すべては大変でしたが)先生方が苦労されている生の声を聞くことで、少しずつ理解でき、次のサポートに役立てることができました。
また、ヒアリングや問い合わせの際の質問や課題に対して、解決策をポータルサイトのFAQにオンタイムで掲載することで、他校の先生方にも情報共有でき、それを評価いただけた事が嬉しかったです。
メルマガを作成したのも、多くの先生に情報共有したかったのですが、わかりやすい記事の掲載だけでなく、そこの地名と特産品を掛け合わせて「●●●通信」と命名し、キャラクタのイラストも加えることで親しみやすくしました。